11680. いいなじゃないよ31

メカニズムを理解してないと、こんな答案を書いてしまうという例として、利用させてもらう権利は、あると思う。

「ウイルス感染した場合もORF6が細胞外に出され、それを発現している細胞が除外されます」

彼は、これで細胞性免疫を説明したつもりになっているけど、残念ながら、できていません。

抗体というのは、確かに「細胞外に放出」されたタンパク質に対して作られます。

でも、細胞性免疫ってのは、そう簡単じゃないんですよ。

11663. いいなじゃないよ19

以前にHLA class I分子の話をしましたよね。細胞の中で発現したタンパク質をプロテアソームで分解してHLA分子の上にペプチドとして載せて「細胞表面に提示」する。HLAと一緒になってなければ、TCRとの結合ができないので、キラー細胞は働くことができません。この現象のことをHLA拘束性と呼びます。

では、どんなタンパク質でもHLA分子の上にペプチドを乗せることができるでしょうか?

残念ながら、それはできないのです。

HLA分子には8アミノ酸程度の大きさに相当する溝が作られます。その溝の中で、特定の場所に特定のアミノ酸(端っこから二番目がFとか)になっている配列しか、きちんとハマらないのでCTLエピトープとして機能しないのです。

これまで細胞性免疫の誘導を目的に研究を続けられたワクチンがHIVワクチンです。

研究者は、感染者のHLAを記録し、その人の体の中にあるウイルスの配列を一人ひとり調べて、あるHLAを持っている人だけでアミノ酸変異が蓄積するところを探しました。CTL エスケーブの選択圧がかかっている場所は、ウイルスが変異するからです。そして、その特定の領域のペプチドを細胞に振りかけると、(ペプチドは小さいのでトリミングの経路をバイパスしてHLA分子の上に乗っかることができます)抗原として認識され、CTLによって殺されることが確認され、どこの領域をワクチン抗原として使ったらいいか?が推定されました。

長いHIVの遺伝子の上で、gag, vif nefの3つだけがCTL誘導ワクチン抗原として使われています。

(詳しくは滝口先生の総説でもお読みになってください)

果たしてORF6は細胞性免疫を誘導することが出来るのでしょうか?

Sタンパク質が細胞性免疫を誘導することは既に論文がありますよ。なぜ、ORF6でなければならないのか、全く説明になってません。

ORF6に対する抗体では中和抗体にはならないので感染予防効果は全く期待できません。

付け焼き刃にもならん、今時なら理系特別進学クラスの高校生でも知ってるようなことで間違えて、誤情報を垂れ流す老害は、黙ってていただきたい。