10386. 本物のCOVID-19を見てる医者

と、患者を見てない薬学部の花木先生の違いですらも、分からない人には分からないのだろう。

最近、イベルメクチンも話題になっていますが、この薬もほとんど使用していません。これにも理由があります。

イベルメクチンの海外で行われた臨床試験の論文は、エビデンスレベルが低いものばかりで、ほかの治療薬を併用していたり、サンプルサイズ(対象の患者数)が小さかったり、投与量がバラバラであったりなど、まだ結果を鵜呑みにできない状況です。最新の比較的規模が大きい臨床試験では有効性が証明されませんでしたし、日本はもちろん、アメリカの主要なガイドラインでもまだ推奨されていません。

3月22日、EMA(欧州医薬品庁)は、イベルメクチンの新型コロナ治療での使用は、副作用の懸念を理由に臨床試験以外は支持しないと公表しています。つまり現時点でイベルメクチンは効くのか、効かないのか、ハッキリしていないのです。

臨床医が未承認で有効性が確認されていない薬を使用するのは、重症でほかに選択肢がないケースであり、その場合でも病院の倫理委員会から審査を受けます。

これまで私たちは、有効性が証明されているステロイドを中心に、レムデシビル、トシリズマブ(米国のガイドラインで推奨)を使用して、多くの重症患者を救命してきました。

コロナの治療にまったく関与していない、医師ではない方が、安易に未承認薬を勧めるようなコメントは悪影響が大きいので、現場としては避けてほしいのです。同時に専門性を理解していない、メディアの側にも責任があると感じています」

未承認の治療薬を自己判断で服用するのは危険

東洋経済オンラインで、筆者は3月12日配信記事「イベルメクチンに超期待する人が知らない真実」において、コロナ治療薬の最新事情を紹介しているが、期待されていた薬が実際に患者に使ってみると有効性が証明されなかったケースは多い。未承認の治療薬を個人輸入して、自己判断で服用するのは極めて危険な行為なのだ。

「民間病院が商売としてコロナをやりたいと思うぐらいのインセンティブ(診療報酬)をつければ、日本の医療体制はまたたく間に強化される」

今年1月、菅義偉首相を公邸に訪ねて、このような独自のコロナ対策を提言した、東京慈恵会医科大学の大木隆生教授(血管外科医)。

大木教授はSNSや動画サイトなどで、「新型コロナは風邪のちょっと悪いヤツ」、「医療崩壊は一部の病院や限られた診療科のみ」と主張している。

大木教授の主張に対して、岡教授は別の考えを示した。

「大半の病院がコロナ患者の受け入れができない理由は、経営面だけではないと思います。感染症専門医やICN(感染管理認定看護師)がおらず、感染予防やコロナの診療に自信がない、という側面もあるでしょう。仮にクラスターが起きてしまうと、全診療がストップして経営的にさらなるダメージを受けます。患者さんが亡くなれば、病院の存続に関わってしまう。ただ、金を出せば民間病院もコロナを診る、という単純な話ではないのではないでしょうか。

第2波のコロナ患者は、若い人で軽症が多かったので〝風邪のちょっと悪いヤツと思ったのかもしれません。しかし、第3波は中高年世代から上の重症患者が多く、酸素吸入や人工呼吸器が必要な状態の患者が入院の多くを占めました。これまでのインフルエンザや風邪では、肺炎患者が押し寄せる事態にはなりませんでした。百聞は一見に如かず。実際にコロナの重症患者を診ると考え方が変わるでしょう」

本当の医療崩壊とは何か

医療崩壊の定義について、大木教授は「コロナ対応の診療科が疲弊しているか否かではなく、救える命が救えなくなったか(どうか)」と主張している。これに対して岡教授は──

「自分の解釈に都合がいいように、医療崩壊の定義を作るのは詭弁ではないでしょうか。現場で起きている事実を直視することが大切です。第3波では、重症患者の搬送先が見つからないケースが報告されていますが、これは実際に起きた医療崩壊ではないでしょうか。

それに感染症科や呼吸器内科、集中治療科などがコロナ対応をしているからこそ、外科などの他科が通常診療を継続できるのです。ピーク時には、私もほかの診療科に応援を頼んだこともありますが、彼らにも本来の診療があるので、決して簡単なことではありません。同じ医師であっても、コロナの患者を診ていないとわからないことがあるのです」

補足すると、東京慈恵会医科大学附属病院は、大木教授の発言は個人的見解であり本学の総意ではないと表明している。また、大木教授は同病院の対コロナ院長特別補佐という立場だったが、3月になってその職は解かれた。

人工呼吸器に対する「誤解」

コロナ治療の「切り札」として報道されていたのが、人工呼吸器やエクモ(体外式膜型人工肺)である。前述の外科医・大木隆生教授らは、人工呼吸器やエクモが使われるICU(集中治療室)を、人工呼吸器を扱える外科医も動員してフル稼働すべきと主張しているが、そこに大きな誤解があると岡教授は言う。

「実は人工呼吸器とエクモが、コロナを治すわけではありません。患者の回復力と薬で治るための時間を稼ぐための、生命維持装置なのです。

それに、肺が健康な状態で手術を受ける患者と、呼吸不全になっている重篤な状態のコロナ患者とでは、医師にとって人工呼吸器の管理に要求される知識、内容が違います。例えると、普通自動車の運転と、大型ダンプカーの運転くらいの違いでしょうか。

重症化すればコロナによる肺炎の治療をしなければなりません。ステロイド剤やリウマチの治療薬の使用など、専門性の高い治療薬を使うため知識と経験が要求されます。加えて徹底的な感染予防策を続けながらの治療です。感染症や集中治療の専門家が司令塔としていないと、重症者の救命を目指す質の高い診療は難しいでしょう」

一方、開業医が中心となっている東京都医師会は、3月の定例記者会見で第4波に備える対策として、驚くべきプランを公表した。未承認薬のイベルメクチンを、PCR検査陽性となった自宅療養の軽症患者に投与、重症化を予防するというのだという。

これに対して岡教授は──

「治療薬がないから診られない、というのはおかしい。厳しいことを言わせていただくと、今でも医師の中には風邪に抗生物質を出している先生が少なくありません。これは大部分が適切とは言えない処方で問題になっていますが、何か薬を出さないと治療にならないという固定観念に囚われているからでしょう。同じく、効果があるかわからないアビガンやイベルメクチンが処方できれば解決する問題ではありません。

そもそも8割は軽症で自然に治る感染症ですので、軽症患者への投薬は慎重であるべきです。仮に副作用がなくても広く処方されると、イベルメクチンが有効な寄生虫治療に足りなくなる事態にもなりかねません。

重症化した場合、コロナの治療薬は、ステロイド剤のデキサメタゾンとレムデシビルが、すでに承認されています。現代医療の基本であるEBM(evidence based medicine:科学的根拠に基づく医療)では、質の高い臨床試験の結果が出てから使用するか判断するべき。もっと冷静に対応してほしいですね」

https://toyokeizai.net/articles/-/418791?page=3

COVID-19患者に対するイベルメクチンの有効性および安全性を検討するプラセボ対照ランダム化二重盲検(評価者、患者)多施設共同並行群間比較試験(登録番号: jRCT2031200120)略称:COVID-19患者に対するイベルメクチン二重盲検比較試験

https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031200120