10185. 痒いところに手が届く

くつ王ジャーナルには、なんでも書いてあるなぁ。

今から約1年前、2020年4月に「イベルメクチンが新型コロナウイルスの増殖を抑制する」という実験室での研究結果がオーストラリアから報告されました。

https://doi.org/10.1016/j.antiviral.2020.104787

イベルメクチンの臨床研究結果が取り下げに

同じ2020年4月にヒトに対してイベルメクチンが投与された症例と投与されていない症例を解析した症例対照研究が査読前論文として掲載されました。

Amit Patel, et al. Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness Patel, Amit, Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness (April 19, 2020).

この論文によるとイベルメクチンを投与されていた患者ではされていなかった患者と比べて総死亡率が圧倒的に低かった(1.4% vs 8.5%)という驚異的な結果であり、当時、臨床医の間では衝撃が走りました。

この論文の対象となっていたのは「2020年1月1日から2020年3月31日までにCOVID-19と診断された患者」であり、3ヶ国169病院から704人のイベルメクチン投与患者、704人の非投与患者が登録されています。

しかし、イベルメクチンが新型コロナウイルスに有効かもしれないという実験室レベルでの研究成果がオンライン上に掲載されたのが4月3日なのに、3月31日までにイベルメクチンを投与されていた新型コロナ患者が(いくら世界広しと言えども)704人もいるのか、と。世の中にはそんなに先見の明のある臨床医がいるのかと。

結果として、この論文はサージスフィア社という企業がデータを集積していたのですが、ここからサージスフィア社に疑いが持たれ始め、NEJMやLancetといった一流雑誌に掲載されていたサージスフィア社が関わった論文が取り下げとなったことと合わせて、こちらのイベルメクチンの研究も取り下げになっています。

論文が取り下げられた後も、南米ではもともとイベルメクチンが多く処方されていることもあり、その後も新型コロナに対してイベルメクチンが投与されているようです。

南米だけでなく、アメリカからもイベルメクチン投与群での死亡率低下が示された、という後ろ向き解析の研究結果がCHESTという一流雑誌に掲載されています。

一方で、オーストラリアの実験室での研究結果で示された薬物濃度を達成するためには、ヒトに投与する通常量の100倍以上の投与量が必要である、ということなど効果を疑問視する専門家もいるようです。

しかし、もちろん薬剤の濃度が必ずしも臨床効果と相関するとは限りませんし、ハムスターの感染モデルでは炎症を抑制したという動物実験の結果もありますので、薬物濃度だけが効果を規定するわけではないのかもしれません。

後ろ向き研究では効果が示された治療薬が、ランダム化比較試験では全く効果がなかった、ということがこれまでも新型コロナで起こっています。

イベルメクチンのランダム化比較試験もなくはないのですが、どれも症例数が少ない、盲検化されていない、などの制限があります。

今後、より規模の大きい、盲検化のされたランダム化比較試験で効果が示されれば、イベルメクチンの新型コロナに対する有効性について疑問を唱える人もいなくなるでしょう。

最初にin vitroで結果が出たはずなのに、効果なしの結果が出ているのですか?

直接のウイルス増殖抑制効果があるならば、in vitroでも効果は見えるはずです。

サイトカインストームを抑えると言うことならば、動物実験が可能。

日本に患者が少ないなら、メタアナリシスって手法もありますが・・・

花木先生が「治験」でも「研究」でもなく「政治・世論」を動かして政府に承認を出させようとしてる動きは、とても危険に感じます。

結果があるのならば、粛々と承認申請をして欲しいです。