8640. SARS-X足りえず

ヒトへの感染は証明されず。よって、このRc-o319ウイルスに対する抗体がSARS-CoV-2から日本人を守っている「ファクターX」とは言えない。

宮沢先生がテレビ出演に励んでいる間に、獣医は獣医らしい仕事を着々とこなしている。

Rc-o319のヒトへの感染の可能性を推測するために、そのスパイク(S)タンパク質(注1)が、SARS-CoVやSARS-CoV-2の細胞への吸着・侵入過程を担うヒトのACE2受容体(注2)に結合できるかどうかを調べました。まず、Sタンパク質に2か所ある結合モチーフ(RBM; 注3)を他のサルべコウイルスと比較したところ、その1か所にあるアミノ酸欠損部位を含めその結合に関わる部位のアミノ酸がSARS-CoVやSARS-CoV-2とは多く異なっていること、さらに、ヒトのACE2と結合できることがわかっている他のコウモリ由来のサルべコウイルスともそれらがかなり異なっていることがわかりました(図2)。しかし、RBMの2か所ともに大きなアミノ酸欠損があり、かつ、結合に関わる部位のアミノ酸が全く異なるヒトのACE2と結合できない他のコウモリ由来サルべコウイルスの配列とも異なっていることから、Rc-o319 Sタンパク質のヒトのACE2への結合を否定することはできませんでした。そこで、実際にRc-o319が細胞に感染するためにヒトのACE2受容体を使えるかどうかを水疱性口内炎ウイルスのシュードタイプウイルスシステム(注4)を用いて解析しました(図3)。その結果、Rc-o319のSタンパク質をもつシュードタイプウイルスは、その宿主であるコキクガシラコウモリ(R. cornutus)のACE2を発現する細胞には感染しましたが、ヒトのACE2を発現する細胞にはほとんど感染できませんでした。したがって、Rc-o319がヒトに感染する可能性は極めて低いと考えられました。

https://research-er.jp/articles/view/93645

発表雑誌

雑誌名

Emerging Infectious Diseases

論文タイトル

Detection and characterization of bat sarbecovirus phylogenetically related to SARS-CoV-2, Japan

著者

Shin Murakami*, Tomoya Kitamura, Jin Suzuki, Ryouta Sato, Toshiki Aoi, Marina Fujii, Hiromichi Matsugo, Haruhiko Kamiki, Hiroho Ishida, Akiko Takenaka-Uema, Masayuki Shimojima, Taisuke Horimoto* (*責任著者)

DOI番号

DOI: 10.3201/eid2612.203386

論文URL

https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/12/20-3386_article

ついでに。