8591. この分野ってどの分野?

色々とあるのだが。

感染症を研究する基礎医学者は絶滅寸前です。

私が習った頃は、真菌・寄生虫・細菌・ウイルス・免疫の5分野にそれぞれ教授がいました。でも、今は、5分野が1つに合わさった感染免疫学として「免疫」の教授がほとんどのイスを占めてて、病原体を扱う側が手薄になっています。

真菌と寄生虫は既にほぼ絶滅状態。細菌学は「薬剤耐性菌」で生き延びている状態。ウイルス学だけがHIVやHCVで生き延びていたけど、ほぼ「終わった」とされて若手が入らなくなって久しい状態でした。

一方、臨床医として感染症を担当する医師というのは「手技」として確固たるものを手にできない(内視鏡とかエコーとか心臓カテーテルとか)ので、最初から感染症内科医を目指してはならないと経験者は語るのです。多くの感染症担当の医師はかつてはAIDS診療に身を捧げてきました。毎日、医局のソファーで寝るような時代が長く続きました。でも、薬剤が進歩した今となっては、ほぼデフォルトの組み合わせを処方すれば済むようになってしまってます。残る人は、忽那先生のように輸入感染症へ行くか、朝野先生のように「院内感染」を予防するICDとなるか。どちらにせよ、あまり人気はないのです。

今回のコロナ禍で最初の頃に表に顔が見えてたのは、私からみたらトンデモの岩田先生と、薬剤師でもなかった岡田先生と、獣医の宮沢先生。

これじゃあねぇ・・・・です。

今回、西浦先生という「まだ赤ちゃんの分野」のエキスパートと、古参のWHOで封じ込め感染症撲滅チームの尾身・押谷先生が揃った奇跡は、2度と起きないと思います。感染研も「終身雇用」から特任制度になり、まともに研究できる状態ではない。今回、脇田所長ほどリーダーシップを取れる人材が残っていたことが既に奇跡。河岡教授も定年が近い。あれだけの大きなラボをウイルス学者が運営できることは、もう今後2度と無いでしょう。

免疫学者はノーベル賞級の人が多くいます。でも、大抵はノックアウトマウスを作って、細胞内のシグナル伝達を研究する人たちで、「病気」を相手にはしてません。病気も慢性の炎症疾患(クローン病やリウマチなど)あるいは癌免疫が主で、感染症なんて「終わった」病気には、あまり予算が投じられてはいなかったのです。

感染症はSARSとSARS-CoV-2の違いがあるように、「各論」になりやすい。一般化できる結論を得るには向いてないため「学問」として一般誌でインパクトファクターを稼げないためです。

新型コロナが「ステロイドとヘパリン」という対症療法でなんとかなり、製薬会社が抗ウイルス薬を開発してしまえば、おそらくワクチンがどうなろうとも、国予算はもう投入されることはなくなるでしょう。

宮沢先生が「俺は流行はやらない」と言って、10月になるまで自分でSARS-CoV-2の研究に手を出さなかったのも、「収束」が近いと思ったからでしょう。

長年にわたって、マウスの免疫学を重んじ「病原体」の方の人材が生き延びられる環境にはなかったため、「人手」が足らないのは否めません。

疫学を担う保健所も。予算削減で人が減らされました。

アメリカのDr. Fauciは、AIDSの研究でも名を馳せた偉大な研究者です。でも、アメリカは研究できても、あの体たらくなわけです。

日本は山の高さでは欧米には敵わないけど、裾野の広さと中間層の高さでやりくりする。

この分野においても、「日本らしさ」が見えてるのだと思います。

彼のような若手が今後、ちゃんと活躍の場が与えられることを願います。

8514. プロが選んだ三人の研究者