8002. シクレソニドの抗ウイルス効果

シクレソニド=オルベスコ

群馬パース大学大学院 木村博一教授の研究チームが、杏林大学医学部、群馬大学医学部、国立感染症研究所、北里大学大村智記念研究所ならびに横浜市立大学医学部との共同研究で、喘息治療薬の一種であるシクレソニド(売薬名オルベスコ®製造元:帝人ファーマ株式会社)の新型コロナウイルス増殖抑制機構をドッキングシミュレーションという手法を用いて、分子レベルで明らかにし、アレルギー・臨床免疫学の専門誌(J Allergy Clin Immunol., Kimura et al., 2020)に掲載されました。

シクレソニドは、喘息治療のための吸入薬として、約15年前から世界各国で使用されています。また、別の効果として、国立感染症研究所の松山室長らが、培養細胞を用いた実験で、シクレソニドが、新型コロナウイルスのゲノム複製を抑制するということを報告していますが、その詳細は不明でした(Matsuyama S et al., bioRxiv, 2020)。
 そこで、新型コロナウイルスのゲノム複製に関与するウイルスタンパク質とシクレソニドとの相互作用を先端バイオインフォマティクス技術ならびに高性能コンピューターを駆使したドッキングシミュレーションという手法を用い、シクレソニドの分子レベルでの抗ウイルス効果を詳細に研究しました。その結果、シクレソニドは、新型コロナウイルスゲノム複製酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ)には作用しませんでしたが、複製の際に生じた変異を修正する酵素(NSP15エンドヌクレアーゼ)の活性中心と結合し、ウイルスゲノムの正確な複製を阻害することを初めて明らかにしました。これらの結果は、シクレソニドの分子レベルでの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用のメカニズム解明に貢献するだけでなく、今後の新しい抗ウイルス薬の設計などの創薬にも役立つ情報として期待されます。
 なお、本研究で示された知見については、今後、実際のタンパク質を用いて検証を行う必要があると思われます。

●詳細:https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(20)30749-1/abstract

名前も所属も出身大学も、医者かどうかも名乗らない匿名アカウントの方を信じます。