陰性・陽性で「返信」されるがデータとしては数値が記録に残っている。Ct 値という。
Threshold cycleと呼ぶ。この数字が小さければ小さいほど、元の検体にあったウイルス量が多かったことになる。2倍違えば1サイクル早くなるので、Ct値が3.3違うと10倍の差があることになる。
さて、私の友人に、地方衛生検査所でウイルス課に勤めている人がいるので、聞いたことがある。
Q: Ct valueってどれくらいなの?
A: バラバラだよ、30ぐらいが一番、多いかな。でも、17ぐらいのはそこそこあるよ。
Q: 一番、低かったのは、どれくらい?
A: 1桁ってのも、あったよ・・・
これが、何を意味するか、わかるだろうか?
細胞培養で取ってくる実験室のウイルスストックよりも、ウイルス量が高い臨床サンプルがあるって意味です。
そんなものは、滅多にお目にかかれないようですが、スーパースプレッダーにはなるのは当然だなぁと思った次第。だって、原液のウイルスストックを霧にしてばらまいてるんだから。
Ct=30と、Ct=20では、10違う。これで1024倍の差があるってことです。
1滴って宮沢先生はよく言うけど、人は実験動物のように揃ってはいない「異質性」が高いので1滴に含まれるウイルス量だってバラつきます。だから、不特定多数が集まるのが、怖いのですよ。確率論として、大勢集まれば、そのようなスーパースプレッダーが混じってくる可能性が上がるのだから。
遠距離から人が集まる大規模イベントや、密閉空間になるライブハウスが目の敵にされるのも、科学的な根拠があってのことです。
ちなみに、実験室のウイルス株は、分離に使った細胞でもっとも増殖のよかったものが選択されている可能性があります。臨床の検体こそが、実はもっとも人間に対する感染性が高い。
新型コロナは実験室で培養するのにBSL3, 検査室はBSL2が決め事ではありますが、どっかの誰かが言うように大学の、それも工学部などで検査業務を迂闊に引き受けることがないように私が願っていたのは、検体処理の時点で下手すると「実験室内感染」の危険があると思ったからでした。