7362. 強毒型に見えることもある

7560. 強毒化もあり得る

7557. 簡単には弱毒化しない

の続きです。

これまでウイルスの進化ってのは、そんなに人間に都合の良い方に行くとは限らない例をお示ししてきました。

今回は、ウイルス側に変化がなくても、強毒化する例をお示ししたいと思います。

それが、ADEです。

Antibody dependent enhancement=抗体依存性感染増強と呼ぶ。

デング熱で二回目の感染の時に重症化するメカニズムの1つとして知られています。

デングウイルスには4つの血清型が知られていて、それぞれの分岐は1000年以上前と考えられています。国によって流行している血清型が異なりますが、多くの国では1型と2型の両方が流行しています。

まず、先に1型に感染したとします。初感染時には気づくことなく治ってしまう人も少なからず、存在します。二度目に、2型に感染したとします。この場合、1型に対して出来た抗体が、cross-reaction(交差反応)して、2型を中和できる人と、できない人がいます。1回目の感染と2回目の感染の間に「時間」が経過して、抗体値が下がってきた時が危ない。中和活性はない、でも、抗体にウイルス結合力は残っている、そんな人の場合、体の中にある抗体がウイルスに結合し、抗体のFcと呼ばれる部分がFcレセプターに結合すると、マクロファージが感染し、マクロファージから多くのサイトカインが分泌され、サイトカインストームの状態になり、デング出血熱として重症になると考えられています。

フィリピンで、サノフィ社のデングワクチンの回収騒ぎが起きました。デングワクシアは2型に対する抗体が上がりにくいことがわかってたのですが、心配されていた通りに2型の流行が起き、ワクチンをした子供達の重症例が増えたのです。

新型コロナは次の冬には戻ってきます。おそらく血清型が変わるほどの変化はないものと考えられますが、人間の方の抗体値は、デングほどに長持ちしないだろうというのが旧型のコロナから推測されています。(普通、コロナは血液に感染しないので、免疫が強く発動しない。)

若者で、今回、知らずに感染して抗体を持っている人ほど、実は、次が危ないかもしれない。

これは、実際に起きてみなければ、わかりません。IgAにはFcレセプター結合能がないので、ADEは接触感染では起きず、肺に直接感染するエアボーンの場合だけ起きるのかもしれません。

nucleotideの解析だけで、動物のウイルス解析だけで、分子生物学者やウイルス学者が語ることは、物事の一面しか捉えてないことは、よくあります。

人に感染実験を行うことは、出来ないのですから。わからない時は「無い」と断言せず、安全マージンを取って「ある」と想定して対策するのが、人の感染症の場合の考え方の基本。予想が外れても罪の軽い方に賭けるしか無いのです。

人の死は、動物よりもはるかに重い。

公衆衛生は、nucleotideのミクロレベルから、人の動きまで含めたマクロの視点の両方を持たなければなりません。

どうか、ご理解を賜りたく、お願いします。