7360. 強毒化もあり得る

7557. 簡単には弱毒化しない

の続き。ウイルス強毒化の実例を説明しておこう。

HIVの場合、レセプターはCD4と言われているのだが、コレセプターと呼ばれる分子の方が後から発見された。ウイルスは CD4に捕まり、エンベロープタンパク質gp120は立体構造変化の後に、コレセプターに結合する。真の意味でのレセプターはコレセプターの方で、CCR5と言う。

HIVは逆転写酵素という「おばか酵素」が間違えたまま、修正する機構を持ってないために、一回、感染サイクルが回って子孫ウイルスが作られらた場合、必ず、どこか1箇所は親ウイルスとは違って見える。quasispeciesと呼ばれる「亜種」による集団が体の中で形成される。

まだ、3剤併用療法が一般化する前の頃、突然、患者さんの具合が悪くなることがあった。その時に体の中のウイルスを調べて見つかるのが、別のコレセプターCXCR4を使えるウイルスであり、こちらは強毒ウイルスである。これが出現したら数ヶ月後には、患者さんは亡くなってた。

ウイルスの進化が必ず「共存=弱毒」に向かう保証など、どこにもない。

レセプターとのアフィニティが上がる変異、抗体や細胞傷害性T細胞からの逃避変異など、ウイルスは必ず逃げた「子孫」が選択されてくる。(薬剤耐性の例がわかりやすいだろうか?)

選択された瞬間は、フィットネスコストと呼ばれる「一時的な増殖力の低下」が観察されることがある。しかし、増殖を繰り返すうちにcompensate mutationが入り、別の変異を獲得することにより、落ちた増殖力が元に戻るのが常である。

ランダムに入る変異の中から「最適化」されたものが生き延びてくる確率論の世界だが、大勢の人の中でウイルスが増殖している時には、試験管内よりも進化速度は異様に早く見えるものだ。

今、北半球は夏になり、新型コロナウイルスは消えつつあるように「誰かさん」の目には見えるのかもしれない。

しかし、ブラジルを見たらいい。南アメリカは巨大な試験管で、強化型ウイルスが作られるのは時間の問題かもしれないのだ。

もう1つ、私が個人的に危惧しているのは、感染ルートの問題です。

手洗い、マスク、換気の3つが奨励されているのは、それぞれ、接触感染、飛沫感染、空気感染に対処するためなのだが、宮沢先生のように意図的に「エアボーン」を人の意識から外そうという動きが経済界にはある。なぜなら、ライブハウスやエアロビクスなど、離れてても密閉空間で空気を共有する業態が必死の生き残りをかけて、彼ら「提灯持ち学者」に働きかけているからだ。

手洗いで「喉」の感染を防いでも、空気中のウイルスを直接、肺まで吸い込む感染を防げない場合、見かけ上「重症例」が増えて行くことになるだろう。子供が感染しても重症化しないのは、扁桃腺が肥大してて喉のゲートキーパーが強いことと、気管が物理的に細いことも重要なファクターだが、若者が激しく呼吸するスポーツジムなどでは、むしろ、肺に瘢痕が残るような病態を取る症例が、この次の冬には増えることを、私は危惧する。

だから、宮沢先生の罪は重い。

エアボーンは、接触感染よりも怖いのだ。

私はおすすめしない「集団免疫」路線を取るのならば、むしろ、エアボーン対策だけはしっかりやって、手洗いを手抜きするぐらいの方がいいのだ。

何が言いたいかって?  安易にウイルスは弱毒化する仮説に頼らず、エアボーンの意識をしっかり持ち、危ない空気は吸わないように気をつけていただきたいってこと。

エアボーンの啓蒙活動は、これから秋までが勝負。夏の冷房の時期に、おそらくコールセンタークラスターなどは発生するだろうから、エアボーンのエビデンスは積み重なっていくだろう。それを1つ1つ、丁寧に発信していくのが、私の務めだと思っている。

まずは、お隣から学ぼうではないか。

永江くんは、無症状からは感染しないとか抜かすが、そんなことはない。

そのWHOのデータは古い。もっとも感染力が強いのは発症2日前。(だから厚生省は濃厚接触者の調査日時を発症前からに前倒しした)

その時点では、「最後まで発症しないかどうか」なんて、わからないんだよ。

入り口で検温なんかても、無駄。見逃す。