6738c. 今村先生@駒込

長いが、良いインタビュー記事だ。岩永直子さん、頑張りました。

よく「医療崩壊」という言葉が使われますが、その病気で圧迫されるだけでなく、それが増えることによって通常の医療の質が落ちてしまうことも含まれます。本来救えるような他の病気にまで手が回らなくなる。

例えば、災害の時は、重症度に合わせて同じ部屋に複数の患者を入れられます。でも感染症は違う。感染している人としていない人を同じ空間には入れられない。集中治療の場所も全部コロナ用にしなければならなくなるかもしれません。

でも地方で集中治療をやっている病院は、地域全体の集中治療をまかなっています。そこが一つの感染症で占有されてしまったら、他の医療の質が落ちてしまいます。将来的な医療への圧迫は、総体として考えなければなりません。

駒込病院はがんセンターでもあります。がん患者の治療もしっかり安心して行えることを目的に、この病院は作られました。建物の構造も、どんなことがあってもがん治療を死守できるように、考えて作られています。コロナだけに視野を狭めてはいけません。

病床や人員の対応、感染防御のための物品など、現実的なことを考えると、本当の専門家で、全体像が見えている人は日本全体の不安な人まで検査しようということは言わないです。わかっている人は言わない。

無症状でも不安のある人、ごく軽い風邪症状の人など、検査を希望する人も多くいることは理解しています。そして、軽症も多いという新型コロナウイルスの特徴から、その中にも陽性者がいる可能性は否定できません。

しかし、安易に検査を拡大していくことで、本当は避けることができる医療崩壊のカウントダウンが始まってしまう、ということも知っておかなければならない。

そういう人たちでベッドが埋まり、防護具が減ると、本当に守らないと救えない人が救えないことが起きてきます。しかもコロナの患者だけでなく、それ以外の患者の命も救えないということが近い将来に起こってきます。

治療やフォローアップの全体像に気をつけて

ーー軽症の患者も入院させる措置は変えられないのですか?自治体に決定権があるようですが。

長い目で見ると、軽症者でなおかつ自分でも自宅での健康観察を希望する人を、みんな自宅で診られるようになるといいです。病床確保や、防護具の節約や、マンパワーの問題を考えると、それができるかどうかは今後大きな鍵になる。

でも、その時にはその人が公共の交通機関で帰らない配慮も必要だし、医療のマンパワーを救うためかもしれませんが、帰ったら今度は、保健所が観察することになります。帰った後のフォローアップの負担は一方では増える。

医療だけの問題ではないので、そのバランスや、人的なサポートをできるかまで考えないといけない。

こうした感染症の流行では、本当に全体が見えていないと語れないんです。外野の人は結構気軽に、「〜をすべきだ」と言うことがありますが、全体が見えていないだけだと思います。

僕らはこの病気に限らず結核など隔離する病気をずっと診ていますから、どこをどうすると、どこに負担がかかるかわかる。誰が動いているかもわかる。そういう全体像を知らないから、気軽に「こうすべきだ」と言えるのだと思います。

ーーなるほど。思いつきで対策を打ち出すと、バランスが崩れて現場がめちゃくちゃに混乱することもあり得るのですね。

そうです。細かいところまで視野を行き届かせて、そこがケアされるようでないと、狙いとは違う方に進むことはあります。

「検査を多くしろ。なぜ増やさない」という意見についてもそうです。「流行の全体像を知るため」という一部分だけ見たら、良いことのように見えるかもしれませんが、全体を見るとマイナスが多いから専門家は疑問を投げかけたのです。

ーーそうですね。韓国もイタリアも医療崩壊が進んでしまいました。

あの海外の状況が見えてから、みんなも少し納得するようになりましたね。

患者の気持ちに配慮して メディアへの注文

ーー検査も保険適用になりましたが、さすがにこの規模の専門病院では、一般の人が不安だから殺到するということはないですよね?

ないです。そこの負荷は他のところにかかっているはずです。色々なことを切り替えた時は、どこに負荷がかかっているかを把握しにいかなければいけないですね。見ないでおくと気づかない。

不満が出る時はもう悲鳴のような形で出ますからね。制度や人を動かすには時間がかかる。

ーーそれを伝えるのもメディアの仕事でしょうけれども、先生から報道を見てメディアに注文したいことはありますか?

感染症をコントロールする時は、いろんな職種の人が関わっています。例えば、今、メディアの中では保健所はあまり語られていませんが、クラスター対策を中心に進めるには、かなり細かく濃厚接触者を追いかけていく作業が必要です。

その中心を担っているのは保健所の人たちです。保健所は人数が限られているし、感染疑いの人がいたらその検体を取りに行くこともあるし、陽性だった時の届け出を受理したりする。

指定感染症は強制的に入院させる「勧告入院」ができるのですが、人権を制限することでもありますから、入院期間を延ばす時に審議会を開きます。僕も審議会の委員ですが、この延長の審査をする手続きをするのも保健所です。退院後のフォローアップもしています。

ーーそういう負担が様々なところにかかっていることに目配りしながら報道してほしいということですね。

そういうところもスポットを当てないと、サポートもされないまま負荷がかかり続けます。

(以上、抜粋)