6460. 横浜5民はゼロ円

とうとう「共同不法行為」を認め、原告の金銭的要求を棄却する判決が出ました。 (これまでの嶋崎弁護士の裁判での最低は横浜9民の3万でした)

ここからは判決が満額からゼロ円まで、振れることになる。

最後、どう判例が形成されるか、見守ります。

余命リターンズ0181 (2020/2/8)

令和 2 年 1 月 3 1 日判決言渡 同日原本領収裁判所書記官

平成 3 1 年(ワ)第1 0 6 5 号 損害賠償請求事件

(口頭弁論終結の日:令和元年1 2 月 1 3 日)

判 決

主文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(中略)

3 弁済の抗弁について

(1)被告らは,本件懲戒請求を含む原告に対する591件の懲戒請求は,全体として原告に対する共同不法行為を構成するというべきところ,原告は,本件選定者ら及び被告S以外の懲戒請求者から示談金又は損害賠償金の弁済を受けており,これらの弁済金によって本件懲戒請求を含む原告に対する591件の懲戒請求により生じた原告の損害は全部填補されたと主張する。

 これまでに説示したところを前提とすると,まず,本件懲戒請求は,本件ブログに呼応して付和雷同的に行われた大量懲戒請求事案の一部をなすものであり,本件懲戒請求を含む原告に対する591件の懲戒請求は,本件投稿に対し,同一の時期に,同一の理由で,同一の書式を用いて行われ,その結果,神奈川県弁護士会において,併合されて一括処理されたものであること(上記第 2 の2 (6), ( 7)) は,これまで繰り返し説示してきたとおりである。そうすると,591件の各懲戒請求行為は,少なくとも客観的関連共同を有すると認められるから,591件の各懲戒請求行為については,各請求者に故意過失が認められる限り,共同不法行為が成立する。さらに,591名の懲戒請求者各相互間に主観的な意思疎通があったと認めるに足りる証拠はないけれども,本件ブログにおいて,平成29年9月ころ,原告に対する懲戒請求を行うことが本件ブログの運営主によって呼びかけられ,591名の懲戒請求者は,そこに掲載された本件懲戒請求書の内容を認識して本件ブログの運営主から入手した本件懲戒請求書に署名押印をするなどし,それらをそれぞれ神奈川県弁護士会に提出することによって原告に対する懲戒請求を行ったものであることは,上記第 2の2 (5), (6)に記載のとおりである。そうすると,591名の懲戒請求者は,少なくとも本件ブログの運営主と直接意思的な結びつきを持つことによって,いわば本件ブログの運営主を中心とした主観的共同体を形成していたということができ,本件ブログの運営主の意思の下に共同で原告に対する懲戒請求を行った(主観的関連共同)ということができる。したがって,591件の各懲戒請求行為には共同不法行為が成立する。

 これに対し, 原告は,本件懲戒請求を始めとする原告に対する591件の懲戒請求は請求者毎別個に処理されており,いずれも単独で原告の社会的信用を損なう危険性を有し,原告に受忍限度を超える被害を産み出すものであるから,損害の額は請求者毎個別に積算すべきであると主張するが,上記のとおり共同不法行為が成立するからといって,個別,単独に不法行為責任を問うことが許されないものではないから,原告の主張は共同不法行為の成立を否定する理由としては乏しい。

(2)そして,上記 2で説示した事情等本件一切の事情を総合考慮すれば,上記591件の各懲戒請求行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料の額は 1 0 0 万円を上回らないものと認められ,相当因果関係のある弁護士費用も10万円を超えないと認められる。

 さらに, 証拠(甲14,15,17の1,17の2) 及び弁論の全趣旨によれば,原告は,591件の懲戒請求者の一部の者に対し,訴訟上又は訴訟外で本件訴訟と同種の損害賠償請求を行い,和解ないし判決により1人当たり3万円ないし33万円の和解金ないし損害賠償金の支払を受けることにより当該懲戒請求者から相当額の弁済を受けてきたことが窺われる。弁済した主体や各弁済金額及び弁済日等の具体的な内容を原告が明らかしないことから,それら の詳細は不明であるものの,原告はこれまで約10名の懲戒請求者と和解契約を締結した旨を主張していることに加え,判決により終局した訴訟やその判決によって賠償金の支払を命じられた当事者の数から推定すると,原告は,合計で110万円を大きく上回る額の和解金又は損害賠償金を既に懲戒請求者の一部から受領していると認められる。

そうすると, 本件懲戒請求を含む原告に対する591件の懲戒請求により生じた原告の損害賠償請求債権は消滅したと認めるのが相当である (なお,弁済金を遅延損害金,元金の順に充当したとしても,本件懲戒請求を理由とする損害賠償債務は弁済によりすべて消滅したということができる。)から,結果,被告ら(本件選定者全員を含む。)は,上記2の損害賠償義務を負わない(給付の一倍額性)。

(3)これに対し,原告は,共同不法行為制度は被害者を救済するために設けられた制度であるから,被害者救済のためでなく,その制度趣旨とは逆の加害者救 済のために共同不法行為制度を適用することは理論的に不可能であると主張する。

確かに,共同不法行為の制度は,被害者保護のために因果関係の立証の程度を緩和させた制度と解せられるが,発生した損害に対して複数行為者の不法行為責任が認められるか否かという問題と,被害者に発生した損害に対して弁済があったと認めることができるか否かという問題は次元の異なる問題であるし,もとより,我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補填して,不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり,加害者に対する制裁や,将来における同様の行為の抑止,すなわち一般予防を目的とするものではない(最高裁平成 5 年 3 月 2 4 日大法廷判決・民集4 7 巻 4 号 3 0 3 9 頁, 同平成 9 年 7 月 1 1 日第二小法廷判決・民集5 1 巻 6 号 2 5 73 頁各参照)から,明文上懲罰的損害賠償の制度が認められていない現民法の解釈どしては,原告の上記主張を採用することは困難である。

 また,原告は,悪意による不法行為及び人の生命又は身体を侵害する不法行為に係る精神的損害の賠償の債務で判決又は判決と同一の効力を有するものにより確定したものでないものは,その全部又は相当と認められる数額の限度において,その性質が他の賠償義務者又は第三者による弁済を許さないと解すべきである(ア)とか,本件懲戒請求に係る損害賠償債務の弁済による消滅が認められるためには,被告ら(加害者)において,共同不法行為の全貌・全体像を余すところなく主張立証した上で,その損害の総額を主張立証しなければならず,多数の者が原告(被害者)に対する攻撃に順次殺到したことに起因する原告(被害者)が受けた被害の質及び量について,その大きさ及び深刻さを解明しなければならないとし,その上で,①被告ら(加害者)において損害の 総額を余すところなく立証した上で,②被告ら(加害者)において弁済者が被告ら(加害者)と共同不法行為の関係に立つことを立証し,かつ③被告ら(加害者)において弁済者による弁済の総額が①の総額を上回ることを立証しなければならない(イ)などと主張するが,前者(ア)の主張の理論的根拠は明らかでないし,後者(イ)の主張は,被告ら(加害者)に不可能を強いるものであって,不法行為に基づく損害賠償制度が損害の公平な分担を目的とするものであることを看過した机上の空論に等しいというべきものであるから,当裁判所の採用の限りではない。

 したがって,弁済に関する原告の上記各主張はいずれも採用することができない。

4 結論

以上によれば,原告の本訴請求はいずれも理由を欠くというべきであるから,主文のとおり判決する。

横浜地方裁判所第5民事部    裁判官 本多哲哉 自署印