6019. カナベンは簡易棄却

1日で終わったらしい。嶋崎弁護士は答弁書を書く必要もなかったらしい。

今後、損害額の査定において、これは主張する人は出てくるだろうな。徳永弁護士とか猪野弁護士とか。

(佐々木弁護士の場合は第五次だから簡易棄却の制度は存在しなかったし、北弁護士の第六次の懲戒請求は簡易棄却の対象になってない。東弁で簡易棄却の対象となったのはダブル金弁護士のものだけ。東京高裁はこれを理由に55万を11万に減額した。)

以下、余命リターンズ0158記事よりコピペ

4-2-3 必要性、合理性の主張関連

(1)綱紀委員会の調査の前置の制度趣旨

 被告弁護士会は、懲戒請求者の個人情報を対象弁護士に流すことは「必要性・合理性がある手続きである」旨を主張する(甲34の14頁イ)。その論旨は全く不明確だが、対象弁護士に負担や不利益が及ぶから濫用的な懲戒請求を抑制する必要性のことを言っているのかも知れない。

 しかし、そのために綱紀委員会の調査が前置されているのである。

 弁護士法案を可決した国会で、制度趣旨の説明がなされている。曰く「現行法においては弁護士の懲戒裁判がありますが、これを廃止して、弁護士会内に懲戒委員会を設けました。弁護士に非行があった場合には何人も懲戒の請求をなすことができることにして、國民に対する責任追及にこたえることとしたのであります。その反面、みだりに懲戒請求の弊を防止するため、綱紀委員会の調査の結果に基き懲戒委員会を開くことにいたしたのであります。」(官報 第五回國会衆議院会議録第二十六号。) 

綱紀委員会を前置することによる弊害の防止については、最高裁平成23年7月15日判決(橋下徹氏VS光市母子殺害被告弁護団)の竹内行夫裁判官の補足意見でも重ねて説かれている。

 したがって、弊害のおそれは綱紀委員会が適切に「ふるい」の役割を果たせば防止できるのであるから、弊害のおそれがあることを理由に、懲戒請求者の住所氏名をいきなり対象弁護士に通知する必要があると言うことはできない。

(2)10年前に可能だった会規改正

 今日、マスメディアやインターネットの発達により、弁護士に関する情報を多数人が瞬時に共有することが出来、このような大量懲戒請求がありえることは、前記最高裁平成23年判決の橋下徹氏と光市事件弁護団の事件によって、早くからわかっていたことである。同事件で弁護団に対する懲戒請求が広島弁護士会に殺到したのが平成19年、一審判決は平成20年である。つまり10年も前である。その時に適切に会規を改正しておけば、今回のように一般の懲戒請求者が、対象弁護士から逆恨みされ提訴されて多大な損害をこうむることはなかった。

 被告弁護士会は、適時適切に会規を改正するなどして、懲戒請求者と対象弁護士の双方を保護するよう、綱紀委員会の制度趣旨にかなう運用をすべきであった。それをしなかった怠慢を棚に上げて、懲戒請求者の個人情報を横流しにすることを正当化することなど、許されないものである。

(3)登録替え制限について

 対象弁護士は懲戒請求の手続きが結了するまでは登録替え等ができないと言うが、それと、懲戒請求者の住所氏名を通知することは何の関係も無い。

 そのような登録替え制限のために対象弁護士に不利益となるというのであれば、各弁護士会において可及的速やかに手続きを終了させればよいだけである。懲戒請求者の住所氏名を知らせることによって手続きが早く終わるわけではない。

 そもそも一般人は、そのような登録替え制限の存在など知らない。一般の懲戒請求者が知らなかったことについて過失はない。弁護士法は、なんぴとも懲戒請求できると定めており、予め弁護士法を熟知しなければならないというハードルを課していない。

 したがって、法律上登録替え制限があるからと言って、懲戒請求者が個人情報を対象弁護士に横流しされることなど、到底予測できるものではなく、そのような不利益を課されることに何の必要性も合理性も無い。

(4)名誉、信用棄損について

 被告弁護士会は、根拠のない懲戒請求を受けた場合には、名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあると言うが、そもそもその主張自体が誤っている。

 綱紀委員や職員には守秘義務が課され(会規6条)、綱紀委員会も調査期日も非公開であり(会規7条、34条)、記録も非公開である(会規64条2項)。したがって、懲戒請求がなされたというだけで、対象弁護士の名誉、信用等が不当に害されるおそれなど無いはずである。

 それにもかかわらずそのおそれがあると主張するのであれば、被告弁護士会は、委員や職員が守秘義務を守っていないとか、議事や記録を濫りに公開している事実を具体的に主張立証すべきである。かつ、そのことを懲戒請求者らが懲戒請求時に知っていたか又は過失により知らなかったことを具体的に主張立証すべきである。ところが被告弁護士会はそのような主張立証は一切行わない。すなわち、自らの主張が失当であることを認めているものである。

 また、名誉、信用等を不当に侵害される「おそれ」という抽象的な可能性のために、全部の懲戒請求者の住所氏名を最初から対象弁護士に通知する必要など全く無い。

(5)弁明の負担について

ア 弁明の負担は常にあるものではないこと

 被告弁護士会は、対象弁護士は弁明を余儀なくされる負担を負うと言うが、そうとは限らない。

 対象弁護士に弁明の機会を与えるのは、不利益処分を科す前には弁明の機会を与えなければならないという適正手続きの要請によるものである。したがって、予め綱紀委員会で事案の調査をして、敢えて弁明を聞くまでもなく不利益処分を科さないという結論に至ったのであれば、弁明の負担を負わせる必要はない。たとえば本件の別件懲戒請求1(会長声明を懲戒事由とする訴外佐々木に対する懲戒請求)において、仮に弁護士会が、個々の会員が会長声明に直接関与していようがいまいが、会長声明自体に問題はないと考えて、対象弁護士を懲戒しないと判断したのであれば、対象弁護士に関与の有無を聞く必要はないであろう。

 弁護士法上も、懲戒委員会の審査(これが刑事事件の公判のようなものである)と、その前段階の綱紀委員会の調査(警察の捜査のようなものである)とで、弁明の機会について差を設けている。懲戒委員会の審査にまで上がれば、懲戒処分の可能性が現実化するから、対象弁護士は審査期日で弁明する権利があることが規定されている(67条2項)。しかしその前段階に過ぎない綱紀委員会においては、そのような弁明の機会の保障の規定は無い。必ず弁明を聞く必要があるとは限らないからである。

 それにもかかわらず、被告弁護士会の会規が、従前、対象弁護士に必ず弁明を求めると規定していたのは(会規27条1項2項)、適正手続きの趣旨を正しく理解せず、対象弁護士に無駄に負担を負わせていたものである。

 そのような無駄な負担を規定する会規の存在を理由に、懲戒請求者の住所氏名を対象弁護士にいきなり通知することが正当化されるものではない。

イ 本件では弁明をさせていないこと

 本件懲戒請求においては、被告弁護士会は平成30年4月3日に綱紀委員会の調査に付し、翌4日に綱紀委員会は懲戒委員会に調査を求めないとする議決をしている。すなわち、被告弁護士会は被告嶋﨑に、「事案」について弁明を求めていない。弁明を求めない以上、懲戒請求者らの個人情報を被告嶋﨑に提供する必要は皆無である。

ウ 弁明に懲戒請求者の個人情報は必要無いこと

被告弁護士会は「適切な弁明等の防御をするためには、いかなる者からの懲戒請求であることを知る必要性は極めて高い」と主張している。しかし、全くそのようなことはない。

調査の対象も、防御の対象も、懲戒事由とされた「事案」である。「事案」に関して、訴えられている内容と、集められた証拠を知ることができれば、適切な防御は出来る。(刑事事件で、被告は公訴事実と開示された証拠を与えられて防御する。制度上検察官の氏名は知らされるが、検察官の住所は全く必要ない。)たとえば、対象弁護士が預り金を横領したとして懲戒請求された場合、懲戒請求したのが金を預けた依頼者なのか、横で見ていた事務員なのかを知る必要は全くない。もちろん依頼者や事務員が不利な供述をしているのであれば、その信用性を弾劾する機会が保障される必要があるが、その依頼者や事務員が懲戒請求者であるかどうかを知る必要は全くない。

4-2-4濫用的懲戒請求の場合―被告弁護士会における原則と例外の逆転―

 被告弁護士会は、濫用的な懲戒請求が不法行為を構成することがあるというが、それであれば、現実に対象弁護士が損害を被り、その被害回復のために必要であると弁護士会が判断した場合に限って、例外的に、懲戒請求者の住所氏名を開示すればよい。巧妙な事実のねつ造による懲戒請求などが想定されよう。プロバイダー責任制限法でも、権利侵害が明らかで損害賠償請求のために必要な場合等に限って発信者情報が開示される。個人情報は秘匿が原則、開示が例外である。そのような例外的な場合に当たらないのに、ありとあらゆる懲戒請求で一律に懲戒請求者の住所氏名をいきなり開示する必要性など微塵も無い。

4-2-5懲戒請求者の予測可能性関連

(1)懲戒請求者の立場に関し

ア 被告弁護士会は、懲戒請求者の住所氏名を対象弁護士に知らせる理由として、「懲戒請求者は」「綱紀委員会や懲戒委員会の調査手続において、陳述、説明又は資料の提出を求められることがある」ことを挙げている。

 しかし、懲戒請求者がそのような立場にあるからと言って、個人情報を対象弁護士に知らせる必要があることにはならない。対象弁護士は、目撃証言であれば、誰がどのような証言をしているか知らされなければならないが、その目撃者が懲戒請求者かどうかを知る必要は無い。

イ 被告弁護士会は、懲戒請求者が、異議の申出や綱紀審査の申出をすることができる立場であることを理由に、懲戒請求者が「誰であるかについて対象弁護士が知らされることなく手続きが進められることが合理的とは言いがたい」などと主張している。しかし対象弁護士の防御のためには、異議の申出の理由や綱紀審査の申出の理由を知らされれば十分である。

(2)ウェブサイトで公開されている個人情報保護方針

 それどころか被告弁護士会のウェブサイトを読めば、個人情報は守られるとしか解釈できない。被告弁護士会はそのウェブサイトに「神奈川県弁護士会個人情報保護基本方針(プライバシーポリシー)」を掲載し、「個人のプライバシーをはじめとする権利利益を侵害することのないように」「個人情報の保護を推進することを宣言し」「収集した個人情報の利用は、収集目的の範囲内で行い、原則として本人の了解なしに、目的外に利用したり、第三者に提供したりすることはありません。」「当会における個人情報の取扱いは、個人情報保護法及び下位法令並びに関係するガイドラインの定めるところに従います。」と、一般人に向けて発信している(甲2の1)。このウェブサイトを読んだ一般人が、被告弁護士会に懲戒請求書を出したら本人の了解なしに対象弁護士に住所氏名が提供されると予測することなど、到底不可能である。むしろ、受け取るメッセージはその正反対の、“懲戒請求者の個人情報は本人の了解なしに対象弁護士に提供することはありません“としか読めない。

 したがって被告弁護士会の主張は失当である。

(3)予測を不可能ならしめるその他の事情

 前記のとおり、他士業では懲戒請求者の個人情報が対象者に知らされることは無い。

 裁判官の訴追請求においても、請求者の個人情報が対象裁判官に開示されることは無い。

公益通報制度においては、通報者が通報によって不利益を被ることが無いよう守られている。

個人情報保護法が制定されて久しい。その制定前から最高裁判決で、個人情報はプライバシーにかかる権利であり、みだりに第三者に開示されたくないという期待は法的保護に値すると判示されている。

本件懲戒請求運動に先立って行われた検察庁への外患罪告発運動でも、検察庁がいきなり被告発人に告発状を送って告発者の個人情報を漏らすようなことはなかった。検察庁で内容を検討して、受理しない方針を取り、返戻したようである。

 したがって、ひとり弁護士会だけが、まさか懲戒請求者の個人情報をいきなり対象弁護士に横流しするなど、全く誰にも予測することはできなかった。

(4)他士業の懲戒請求との比較について

前記のとおり、他士業においては、懲戒請求者の個人情報が対象者に開示されることはない。

これについて被告弁護士会は、他士業と弁護士会では懲戒制度が異なるから、他士業で懲戒請求者の個人情報を対象者に開示していないとしても、弁護士会はそうではないと主張する。

 しかし個人情報の要保護性はどこでも同じであるから、弁護士会だけが個人情報を本人の同意なく第三者に漏らしてよいことにはならない。他士業と弁護士会との違いは、自治が認められているか公権力の監督を受けるかの違いだけである。対象者に逆恨みされる可能性、情報提供者を守る必要性は、何ら変わらない。

したがって被告弁護士会の主張は失当である。

4-3小結

 以上のとおり、懲戒請求者の個人情報を対象弁護士に横流しすることは違法でないという被告弁護士会の主張は、全て失当である。

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