1542. 光市母子殺害事件弁護団懲戒請求事件

まず、整理しておかなければならないのは、最高裁の判決は煽動した橋下徹弁護士に対してのものであって、今回、ささきりょう氏はそちらは標的にしないと明言している点です。また、同判決は弁護団に対する懲戒請求そのものについての違法性は判断していない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%B8%82%E6%AF%8D%E5%AD%90%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%9B%A3%E6%87%B2%E6%88%92%E8%AB%8B%E6%B1%82%E4%BA%8B%E4%BB%B6

実際に懲戒請求がおこなわれた結果、その件で懲戒された弁護士は一人もいなかった[3]。という点では今回の余命の件と同じ。

なお、橋下本人は呼びかけたにもかかわらず懲戒請求を行っていない。この点も余命と同じ。

ただし、橋下はこの事件をきっかけに「刑事弁護の社会的品位をおとしめた」とされたため、2010年(平成22年)9月17日、「弁護士としての品位を害する行為」を行ったとして、大阪弁護士会から業務停止2ヵ月の懲戒処分に処せられた。

刑事は検討中だけど、民事はいけると思うんだよね。弁護士に対する不当な懲戒請求に関する最高裁判決や下級審判例を見れば十分いけそう。ちなみに橋下氏の事件は煽った責任を問うものだったけど、私は懲戒請求した当人たちの責任を問うつもりだから同事件は射程外。

だから、これ以上、この判例を研究しても方向性が違うのだが、いちおう書いておこう。大きく3点、橋下逆転勝訴の論拠を余命は持ち合わせていない。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81507

1. 橋下氏は娯楽性の高い番組内での発言であったこと(うっかり失言と甘く見て貰えた)が、個人のブログでの推敲を経ての「発信」である余命と異なる。

2. また、橋下氏は「懲戒請求」という制度を紹介したに過ぎないと主張できるのに対して、余命は「懲戒請求」そのものを煽っている。

3. どちらもテンプレートが使われたのだが、そのテンプレートの作成・配信に橋下氏の関与はない。ネット上に置くだけでなく印刷物を送りつけ、署名を回収し、大和会の名の元に郵送した余命とは関与の度合いが、全く異なっている。

では、一方で懲戒請求をした読者個人の行為が不法行為に当たるかどうかだが、民事裁判は答弁の善し悪しによって印象が異なり、弁護士の腕で白にも黒にもなり得るものだが、今回は、かなり請求者側に厳しいと思われる。(勝てそう佐々木氏は判断したからこそTwitterで呟いたのだろう。刑事=検討中と民事=いけると書き分けている。彼のフォロワーは12000人。12000人に対して、「実は」提訴は辞めました、と言うことは無かろうというのが私の見立てです。)

それは、この橋下判決の中に複数の判事の補足意見として書かれている。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/507/081507_hanrei.pdf

1点目:懲戒請求者においては,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける 相当な根拠なく 懲戒請求をすることは許されない
「しかしながら,同時 に,「 何人 も」とされていることは,懲戒請求者に,恣意的な懲戒請求 を許容 したり ,広く免責を与えることを意味 するわけではない。懲戒請求者は,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける 相当 な根拠 について調査 ,検討をすべ義務 を負うものであり(なお ,弁護士法58 条1項は,「その 事由 の説明を添えて」懲戒請求の申出 をすることができる旨規定 する 。), その 調査検討義務は上記のとおり厳格に要求 されるものではないとしても,安易 に懲戒請求がなされてよいということではないのである」
事実上(佐々木氏が会長声明に賛同した証拠)
法律上(会長声明が法的に問題があるという論拠)
この2つを、懲戒請求者は証拠と共に明確に述べたかどうかが問われる。
だが、
前者を余命読者は成し得ていないと「決定書」は言っているに等しい。
読者代表として多摩丘陵地帯さんは1933 (2017/10/4)記事で、賛同だった場合などと仮定の話をされていることからも、何ら事実を把握せず証拠も提出していないことは明白。
後者については余命もブログにおいて「懲戒理由もぼかしてある」と自白している。
2点目 :余命の自白(弁護士会の企業コンプライアンスを見ているのであって、個々の対象者の懲戒を望んでいるわけではないという主張)は、懲戒請求制度の趣旨に合っていない。
よって制度の濫用と見なされる。
「(前略)
もとより不当 な弁護士活動が批判の対象 となると同時 に懲戒事由に該当 することはあり得,その場合 は懲戒請求は当然妨 げられることはないが,しかし,そのことは,懲戒請求が弁護士活動を批判 するための制度 であるということを意味 するものではないのである」
「(中略)
だがそのことと懲戒請求を行うこととは 別であって,懲戒事由の存否 は冷静 かつ 客観的に判定 されるべき性質 のものである 以上 ,弁護士会の懲戒制度の運用 や結論 に不満 あるからといって,衆を恃んで 懲戒請求を行って数の圧力を手段 として 弁護士会の姿勢 を改めさせようとするのであれば,それはやはり制度 の利用 として 正しくないというべき」
3点目:この事件では橋下氏および視聴者がターゲットにした弁護団の弁護方針は明瞭であって、それに対する批判というのは認められている。
一方、
余命の懲戒請求では、「会長声明」を根拠にしておいて、会長・副会長でもない一般会員の中から恣意的に青林堂出版社が係争中の原告側代理人を選んだ点。
これが
会長だけ
あるいは会長・副会長だけ
あるいは会員全員であれば、まだ、マシだった。
もし、
余命が主張するように佐々木氏を選んだ根拠があるならば、それは懲戒請求書に書かれていなければオカシイ。ブログに書いてあるは通らない。
 ・
4点目:橋下の件は1件だけだったが、余命は126名に出している。この点で、事務負担が相当に異なっている。
「弁護士自治 やその 中核的内容ともいうべき自律的懲戒制度も,国家権力や多数勢力の不当な圧力を排して被疑者 ,被告人についての自由 な弁護活動を弁護人に保障 することに 重大 な意義 がある 。それなのに,多数 の懲戒請求でそれが脅威 にさらされてしまうのであっては,自律的懲戒制度の正しい目的 が失われてしまうことにもなりかねない 。」
が、モロに当てはまる。
余命読者として助かる点は、橋下の例と同じく、
1. 上記懲戒請求は,ほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,弁護士会の綱紀委員会による事案の調査も一括して行われ,上記弁護士らもこれに一括して反論をすることができ,同弁護士会の懲戒委員会における事案の審査は行われなかった。
点。
2.また ,所属弁護士会によって ,本件発言後10 か月以内の時期 に懲戒 しない 旨の決定がなされているから,その 精神的苦痛も既に相当程度に回復 されているともいえ
る点
これらの点を考慮され、おそらく損害請求額は①人あたりではたいした額にはならないとは思う。
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